矢島は四十日の航海を無事終えて妻火奈子の待つ桟橋へとおり立ったが、そこには火奈子の姿はなかった。久しぶりの再会を楽しみにしていた矢島の胸に不吉な影がしのび寄った。アパートにも彼女の姿はなく、描きかけのキャンパスがおかれてあるだけだった。矢島は火奈子の行方を知るために行動を開始した。火奈子のメモから産婦人科を当ったが、十日程前その産婦人科を訪れ、想像妊娠であると診断されてがっかりして帰ったという。その頃、火奈子は、偶然入った映画館で痴漢にあい、その帰り道、ダンプカーの運転手にいどまれ、意志とは逆に肉体をゆだねた。夫への誓いがもろくもくずれてしまった火奈子は、肉欲の命ずるまま男をあさり続けた。これは、火奈子に婚約者矢島を奪われた姉美代子の復讐でもあった。美代子は、火奈子を矢島から遠ざけるため言葉たくみに中国人夫婦劉にセックスの奴隷として売り渡してしまった...